2022/12/20

患者体験価値向上を実現するために掲げるべき指標とは?/医師マネジメントレポートvol.05

弊社ではこれまで1,400件以上の病院経営コンサルティングに携わり(2021年9月時点)、うち医師人事制度構築については、110件以上のご支援(2021年4月時点)をして参りました。こうした中で体験してきた、病院経営のトレンドをまとめてみたいと思います。今回は「患者体験価値向上を実現するために掲げるべき指標」について、見解をお伝えします。

近年注目されている、患者体験価値(PX)

以前、弊社では患者体験価値向上を実現する医師マネジメントについて、見解を述べさせていただきました。

【患者体験価値を実現する医師マネジメント】
https://nkgr.co.jp/useful/hospital-strategy-organization-86913/

病院を運営していく中で重視している経営指標は、病院によって異なります。しかし、その中でも「患者に対してより良い医療を提供できているか」「高い患者満足を実現できているか」といったものは常に追求していくべきものです。患者満足度調査などをされている医療機関も多いのではないでしょうか。

しかし近年、より患者にフォーカスし、病院が提供する価値を高めていくために注目されているものがあります。それが患者体験価値(PX)です。

患者体験価値とはまさに患者が医療サービスを受けていく中で、どういった価値を受け、そこで何を感じているのか、にフォーカスした考え方です。

本記事では一般的に言われる患者体験価値に対して、弊社の見解を加えた考え方をご紹介させていただきます。

機能別に考える患者体験価値

まず「患者体験価値」は、医療機能別に考える必要があります。

なぜなら、病院の機能に応じて、求められる役割や患者が期待することは変わっていくからです。医療サービスを受ける過程で、患者は様々な機能に触れ、急性期、回復期、慢性期、在宅など各機能でバトンパスをしていくのが医療業界の特徴です。

また「患者体験価値」は、文字通り患者の視点に立つ必要があります。病院に対して患者は何を求めているのか? 何を価値として感じるのか? 例えば以下のようなイメージになるのではないでしょうか?

急性期

・高いレベルの検査や手術・治療をすぐに受けられる。
・早く退院できる。退院しても安心して過ごせる。

回復期

・元の生活・ありたい生活に戻れる。
・楽しくリハビリができる。

慢性期

・痛みのない入院生活を送れる。
・自宅に戻れる。

在宅医療

・不安な時にすぐ相談できる。すぐ駆け付けてくれる。
・あちこち行かずにワンストップで対応してもらえる。

終末期

・痛みなく過ごせる。
・自宅で安らかな最期を迎えられる。

例えば急性期は、緊急性の高い症例を扱う病院ではありますが、当事者である患者にとっては一病院です。次の機能に移ることは念頭にはなく、「自分の病気が治るのかどうか、早く家に帰れるのかどうか」といったことを強く意識しているのではないでしょうか。

純粋に高度な治療を受けられることももちろんですが、無事早期回復して、早く退院できることも患者にとっては大きな価値になり得ます。

一方、回復期の場合はリハビリ等を通じて回復をさせていくフェーズにあるわけですが、「このリハビリを通じて本当に元の生活に戻れるのか?」といった不安を感じておられるかもしれません。リハビリ期間も辛い時間を過ごすのではなく、例えば目標を持ち、セラピストに勇気づけられながらリハビリに臨むなど、入院中の生活・医療行為に対しても価値と感じる要素があるのではないでしょうか。

このように、医療機能によって患者が求めているもの、価値と感じるものは様々です。病院の役目が違うからこそ、患者に提供すべき価値も変わってくるのです。

ペイシェントジャーニーマップで考える患者体験価値

言うまでもないことですが、患者が価値と感じるのは「病状が回復した」、「早く退院できた」などの退院時に感じることだけではありません。発病、検査、入院、手術、退院、その後の生活といったように、患者が体験する各過程(ペイシェントジャーニー)を考えていく必要があります。

例えば発病時であれば、おそらく患者は「自分の身体は大丈夫なのか?」「ちゃんと治るのだろうか?」などの不安を持っています。

入院や治療のフェーズでは、「病状が回復しているか?」という不安や「辛い思いをしたくない」などの感情を持っていると考えられます。

このように患者体験価値とは、高いレベルの治療や早期退院などの、医療行為そのものが提供する「機能的価値」だけではありません。患者が抱えている不安を解消したり、好意的に感情をもたらすような「情緒的価値」も重要な要素となります。

これをペイシェントジャー二―と合わせていくつか例にとってみると、以下のようになるのではないでしょうか。

機能的価値

情緒的価値

検査

高度な機器で検査ができる

検査結果を分かりやすく説明してくれて不安が解消した

手術

圧倒的症例数に基づく高いレベルの手術、再発しない

術前・術後も寄り添ってくれて安心できた

入院中のリハビリ

最新のリハビリ療法を受けられて実際に歩けるようになった

いつも勇気づけてくれて、楽しくリハビリができた

このように、ペイシェントジャーニーごとに各過程の機能的価値・情緒的価値は様々考えられます。

治療の結果や退院できたこと以外にも、患者が体験する過程の中で、抱えている不安や期待していることがあるはずです。そこに寄り添い、機能的・情緒的それぞれの価値を提供をすることができれば、より一層患者に提供する価値の向上に繋げていけるのではないでしょうか?

前工程・後工程を意識することで地域一体での体験価値向上

冒頭でもお伝えしたように、自院が担う機能によって提供すべき価値も変わってきます。

しかし、地域包括ケアシステムをはじめ、地域一体で患者に医療を提供している中で、自工程のことだけを考えていてよいのでしょうか? 患者の視点に立つと、治療に向けて病院にかかっているのであり、機能が異なることによる転院はそもそも想定していないことの方が多いのです。

そう考えると、自分たちのところの治療は完了したから終わりではなく、紹介元や転院先との密な連携による患者負担の軽減や、転院の必要性を丁寧に説明するなど、患者の不安を取り除くことも患者体験価値の向上に繋がります。また、転院先での治療がスムーズに行われるように、適切なタイミング(状態・期間)でバトンパスをしていくことも結果として転院先での患者体験価値向上に繋がっていきます。

つまり、自工程だけでなく「連携先との前工程・後工程も意識する必要がある」ということです。前後の工程も含めて患者体験価値の向上を図ることによって、地域全体の体験価値を高めることにも繋がります。

「高度急性期病院で緊急時にすぐ対応してくれる」「急性期病院で専門医療を受けられる」「回復期でしっかり回復して自宅に帰ることができる」といった流れを理解し、患者にとってより良いバトンパスを行うことが重要になります。

自院における患者体験価値はもちろんですが、真に患者に寄り添うのであれば、その前後の工程を踏まえた取り組みも必要になっていくでしょう。

患者体験価値を高めるための目標管理

実際に患者体験価値を高めていくためには、上記のような考え方を医師にも意識していただき、日々の行動で実践していただく必要があります。

そのためには、モニタリングがしやすい指標へと落とし込んでいき、その指標を目標管理や行動評価で掲げていくことで、患者体験価値向上に向けたマネジメントを実現していくことが可能です。

ここでネックになるのが「指標化」です。カウントができる、評価ができる指標へと落とし込むこともそうですが、患者体験価値向上に繋がる指標である必要があります。

ではどうやって指標化していけば良いのでしょうか?

弊社ではアウトカムとプロセス、コンピテンシーの3つに展開していくことがポイントであると考えています。

アウトカム

アウトカムは定量指標であり、その指標が伸びることで患者体験価値向上に直結する、結果を追うべき指標です。例えば、「早く退院したい」という価値に寄り添うなら、平均在院日数の短縮率などがアウトカムとして見ていくことができると思います。

プロセス

次にプロセスですが、これはアウトカム指標を伸ばすために必要な取り組み(プロセス)を指標とすることで、具体的なアクションも含めて指標化することができます。

例えば先ほどの平均在院日数の短縮率がアウトカム指標ならば、プロセス指標は「退院カンファレンスの実施回数」や「特定の疾患における平均在院日数」などに分解できます。これらを達成できれば、アウトカム指標の達成にも繋がる、というプロセスに落とし込むことがポイントです。

コンピテンシー

最後にコンピテンシーですが、患者体験価値向上に繋がる指標は、何も定量評価が全てではありません。日々の声かけや説明の仕方など、定性面においてもモニタリングをしていくべきでしょう。

だからこそ、コンピテンシー(ハイパフォーマーの行動特性)も見ていく必要があります。患者満足度の高い医師の行動特性を把握し、その行動(プロセス)を定性評価の中でモニタリングしていくことで、日々の行動においても患者体験価値を意識してもらうことができます。

このように、定量指標と定性指標にバランスよく落とし込んでいくことが重要です。

今回、患者体験価値向上に向けて掲げるべき指標の考え方をお伝えさせていただきました。

今後はこの患者体験価値の追求が求められていくと思います。それを病院全体の取り組みに昇華させるには、皆で考えるだけでなく、上記のような経営指標への落とし込みが必須となるでしょう。

是非、日々の経営のご参考になれば幸いです。ご不明点・ご相談などありましたら、お気軽にご相談ください。

「医師人事制度構築支援のご案内」ダウンロード

私たちのこれまでの支援実績・経験を踏まえ、患者体験価値の向上も視野に入れた「医師人事制度構築支援」について、サービスのご案内資料をまとめました。ぜひダウンロードいただき、マネジメントシステムの改善・導入を考えていただく際のヒントとしていただけましたら幸いです。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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このレポートの執筆者

山崎太郎

病院経営コンサルタント(医師人事・人事評価制度・RPA)

日本経営入社後、病院・介護施設における人事評価制度構築や職員研修など人事マネジメントに関わる支援を中心に行う。現在は医師人事評価制度整備支援・原価計算・BM データを活用した科別の目標設定支援、 RPA の導入支援を主に展開中。

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